海に生まれ、捕鯨を日々の糧として
生かされていた浦人たちの
壮大なストーリー
常に鯨の悲哀をともなっていた。豊漁の宴に酔いながらも、浦人たちの心は決してやすらぐことはなかったのである。
しかし、そこには人間と鯨の「生」への真摯な姿がある。古式捕鯨が歴史の1ページになろうとも、その心は今もここに生きている。
江戸時代から明治まで
234年間※1栄えた古式捕鯨
古くは弥生時代までさかのぼることができる捕鯨。
むかしは、寄り鯨※2が流れていたのを天の贈り物として喜び、浦の人々で分配していたそうです。
北浦とよばれる一帯の沿岸地域は、下り鯨※3の通り道にあたり、寄り鯨を捕らえる機会がありました。
捕鯨が組織的にはじめられたのは、鯨組がつくられてから。江戸時代から明治にわたって全盛期となり、近代捕鯨がはじまると、網に追いたて、銛をつく網捕り式の古式捕鯨は衰退していきました。
※1.年数には諸説ありますが、くじら資料館では「234年」とご案内しております。
※2.寄り鯨…沿岸に座礁した鯨
※3.下り鯨…冬時期に子育てのため、暖かい海に南下する鯨
通浦の鯨組
男たちの「くじらへの想い」
通浦の鯨組は、鯨に対する想いが格別でした。 鯨がたくさん獲れたころ、地域の人たちの生活が豊かになり、 子どもたちにも、栄養のあるものを食べさせられるようになった。
それはすべて「鯨からの贈り物」
私たちを生かしてくれた、海と鯨への感謝と憐憫※の情が交差する複雑な思い。
それは鯨組だけでなく地域みんなが感じる共通の思いでした。
※憐憫…かわいそうに思うこと。あわれむこと。
初代 通鯨唄保存会
2代目 鯨唄保存会
現在の鯨唄保存会
鯨唄の継承
鯨への哀れみと報恩感謝の心
鯨組の男たちは、捕鯨を生業としていたが、鯨から恩を受けていることが
常に心にありました。
それに感謝し報いる(恩返し)として、
鯨に人間と同じように戒名までつけていたことが、
鯨の位牌とともにお寺に安置されている「過去帳」にも記されています。
また、鯨の胎児の墓を建て、今もなお地域の人たちにより鯨の法要が営まれています。
全国的にも珍しい鯨墓とともに、民情のシンボルとして「鯨唄」があり、現在も唄い継がれています。
鯨唄は大漁を祝う唄ですが、鯨の死を心から悼み、歌うときにも手を叩かず「揉み手」で行われます。
童謡詩人 金子みすゞと「くじら」
金子みすゞの父庄之助は通生まれ。 幼いころは、父の実家に遊びに来ていました。
当時、くじらが通にだんだんと来なくなってきたころで、その様子を「鯨捕り」の詩に詩っています。
金子みすゞの詩の優しさ、悲しみはこの通の「くじら文化」が大きく影響したといわれています。 通のくじら文化を知れば知るほど、金子みすゞのルーツはここ青海島・通にあると信じています。
童謡詩人金子みすゞ
「赤い鳥」、「金の船(のち「金の星」)」、「童話」などの童話童謡雑誌が次々と創刊され、隆盛を極めていた大正時代末期。そのなかで彗星のごとく現れ、ひときわ光を放っていたのが童謡詩人・金子みすゞです。 金子みすゞ(本名テル)は、明治36年大津郡仙崎村(現在の長門市仙崎)に生まれました。成績は優秀、おとなしく、読書が好きでだれにでも優しい人であったといいます。
引用元:金子みすゞ記念館
鯨捕り
海の鳴る夜は
冬の夜は、
栗を焼き焼き
聴きました。
むかし、むかしの鯨捕り、
ここのこの海、紫津が浦。
海は荒海、時季は冬、
風に狂うは雪の花、
雪と飛び交う銛の縄。
岩も礫もむらさきの、
常は水さえむらさきの、
岸さえ朱に染むという。
厚いどてらの重ね着で、
舟の舳に見て立って、
鯨弱ればたちまちに、
ぱっと脱ぎすて素っ裸、
さかまく波におどり込む、
むかし、むかしの漁夫たち――
きいてる胸も
おどります。
いまは鯨はもう寄らぬ、
浦は貧乏になりました。
海は鳴ります、
冬の夜を、
おはなしすむと、
気がつくと――
金子みすゞ童謡全集(JULA出版局)より
命の大切さを親子で学ぶ
「くじら資料館」
北浦と呼ばれる山口県北部の沿岸地域は、古くから捕鯨が行われていました。
ここ通地区の綱取り式捕鯨は、江戸時代に全盛を迎え、近代捕鯨が始まる明治の終わりにその幕を閉じました。
「くじら資料館」は平成5年(1993年)鯨墓近くに建設され、国指定重要有形民俗文化財 「140点の捕鯨用具」等を中心に300年以上前の捕鯨用具などが展示されています。
日本一、小さな資料館と呼ばれることもありますが、「命の大切さ」を学ぶことができ、地球の70%を占める海の恵みや鯨と私たちが今後どう向き合っていくかが問われる大切な施設です。
屋上の「くじら」が目印
くじら資料館の内観
くじら資料館前の鯨モニュメント
親子で歩く「くじらの里」
くじら資料館で学んだことを話をしながら、親子でお散歩しませんか?高いところにある鯨墓から、資料館のモニュメントもぜひ見てください。
海辺に腰かけて、「ここは昔、人がたくさん住んでいて、この海に大きな鯨がやってきてたんだよ。」
ぜひ、お子様が感じたことに耳を傾け、親として教えておきたいことなど、会話を楽しんでください。
通漁港
鯨墓へ続く道
通の人々の日常
国指定重要文化財「早川家住宅」
ご利用案内
- 開館時間
- 9:00~17:00(但し、入館は16:30まで)
- 休館日
- 毎週火曜日(祝日の場合は開館、翌平日休館)
- 入館料
- 一般200円(団体160円)、小中・高校生100円(団体80円)
※団体は20名以上
※長門市民及び市内の学校の児童・生徒は無料(証明となるものの掲示が必要) - アクセス
- 道の駅センザキッチンから車で20分
長門市駅から車で25分、バスで30分 ※通漁協前のバス停から歩いて30秒
お問い合わせ
長門市くじら資料館へのお問い合わせは、以下のフォームより受け付けております。お問い合わせいただいた内容をご確認しまして、なるべく早くご返信させていただきます。以下のフォームに*印がついている項目は入力必須となっております。お手数ですが、ご入力のほどよろしくお願い申し上げます。